Little boy with a flashlight

なんとなくデザインしているわけではありません。

 クリエイティブの仕事をしていると、切っても切り離せないのが「コンセプト」。自分だけの世界を表現するアーティストとは異なり、私たちは広告主・クライアントさまの目的達成に向けた戦略を展開するクリエイターとなります。ですから、「自分の感性が赴くままに表現しました。この世界感が理解できる人だけが視聴してくれればいいです」ということにはなりません。だったらどう進めていくのかという「軸や方針、込めたいメッセージ」を決めることからプランが練られていくのです。30数年、現場でこの仕事に携わってきた私個人の解釈ですが、かんたんに言うとこれが「クリエイティブコンセプト」になります。伝えるにあたり「何を大切にしたいのか」や、「何を軸にしたいのか、こだわりたい軸・世界観」を、関わる人にも分かるようにシンプルな言葉で表すのです。

 一方、「マーケティングコンセプト」という基軸もあります。コミュニケーションデザインに至るもっと川上の商品開発からはじまり、顧客に到達するまでの川下までを俯瞰した流れにおけるものですが、ここでのコンセプトは、「相手に届けたいこだわり、目指すべき世界観」がそれに該当します。「それを得た(経た)後に満たされる感情・世界観」であり、「満足したときに、ターゲットが発する言葉」となります。一時期、弊社シャフトでオリジナル商品を開発・デザインし、福祉施設さまで製造していただく取り組みをしていました。「すべての人に健康と福祉を」、「働きがいも経済成長も」、「陸の豊かさも守ろう」とSDGsにつながれば、とわんちゃんグッズを製造・販売。そのマーケティングコンセプトは「胸が高鳴る愛犬との豊かな生活」でした。

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相手を振り向かせたいなら、然るべき方法とタイミングで。

 コミュニケーションデザインの仕事の流れを紹介しましょう。「こういった取り組みを30代〜40代の家族に向けてメッセージしたいので戦略を練って欲しい」、とのご要望からスタートします。広告主・クライアントさまには「知って欲しい、買って欲しい、来て欲しい…」などの目的があり、商品開発する前から定められた「ターゲット」や「予算」、「納期」が設けられています。「大特価!」や「この日限りの限定販売!」、「○月○日にイベント開催!」など即時性が求められる案件もあれば、時間をかけてじっくりと訴えたり・情報提供を繰り返しブランドイメージを浸透させる場合もございます。ケースバイケースですが、いずれにしても広告主・クライアントさまの目的達成に向けた機能する戦略を念頭に、頭のスイッチをONにさせてコンセプトづくりがらはじめていくのです。

 ターゲットがこの層であれば、紙面サイズをコンパクトにした方が手に取ってもらいやすいのでは? YouTubeならショート動画で関心を高めて他のツールで詳しく見てもらうように展開すれば? この人たちには落ち着いた表現がいいのでは?など、振り向いて欲しい相手によってメッセージをする場所や仕方は異なります。だからこの媒体で展開しましょう!、と提案する案件もあれば、紙面サイズや印刷色の数などがすでに決められており、さらに、写真やイラスト・文字情報の素材を提供されて、B1ポスターやA4パンフレット8ページにデザインをして欲しい、と「レイアウト」主体の仕事もあります。レイアウト案件なら、8畳のワンルームマンションがあるので、すでにあるベッドとテーブル、ソファー、チェストを綺麗に納めて欲しい、というようなイメージです。こんな場合でも、デザインを進めるにあたっては「クリエイティブコンセプト」を立てるようにしています。高齢者施設が対象なら「快適な時間が過ごせる自分だけの世界」とし、ベッドを窓側に配置して四季の移ろいを寝ていても見ることができるようにしたり、学生寮が対象なら、「学びも遊びもアクティブに」と定め、忙しい学生さんが目覚めてすぐに外出できるよう、ベッドや着替えの入ったチェストをドア付近に並べるのもいいでしょう。

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スタートを切る前に、しっかりとした準備を!

 クリエイティブコンセプト、マーケティングコンセプトはともに、こだわって推し進めたいテーマや世界観であり、全体を貫く軸・旗印ともなる位置づけであり、途中で迷ったときには軌道修正できる羅針盤のようなものになります。そもそもの目的、ペルソナを設定したターゲットとなる対象をしっかりと認識した上で、誰もが分かるよう、必要最低限のシンプルな言葉で表現してみると立派なコンセプトが完成すると思います。欲を出してアレもコレもと付け加えてしまうとダメですよ!なんのこっちゃ分からなくなってしまっては、本末転倒です。

▢クリエイティブコンセプト
伝えるにあたり、「何を大切にしたいのか」、「何を軸にしたいのか、こだわりたい軸・世界観」を、関わる人にも分かるようにシンプルな言葉で表現。
▢マーケティングコンセプト
「相手に届けたいこだわり、目指すべき世界観」。また、「それを得た(経た)後に満たされる感情・世界観」であり、「満足したときに、ターゲットが発する言葉」を表現してもいい。