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取材で見つけた、成功と失敗の法則!?

企業や団体のPR誌を数多く制作してきたシャフト。それに絡んで約2,000件にも及ぶ、お店や会社、施設、神社仏閣などを取材している。
多くのスポットに足を運んでいると、どこにでもあるようなところもあれば、差別化を図るべくさまざまな取り組みに着手しているところもある。
脈々と続く歴史が老舗となって客の絶えないお店もある一方、客足が遠のきさびれて見えるお店もある。
「今日取材してきたお店、油モノの料理も扱うところで、スタッフが少ないせいか清掃が行き届いてなくて・・・」
ドレッサーが疲れた顔で席に着く。
「料理は美味しんですけど、メニュー用紙も床も油でねっとりしているし、駐車場ではゴミや雑草が気になっちゃって。
味を求めて次も行くか?って聞かれるとNOなんですよね」
「見た印象や受けた感覚って、長く記憶に残るからね。それが期待して行ったお店なら、なおさらだよ。
良いも悪いも、家族や友だちに口コミで広がっていくことなんて、お店の人は意外と気付かないからね。
ボクが以前取材したお店のオーナーが言ってたんだけどね、チェーン展開している大手店舗の時給が良いから地元店が捻出できる給料では、
アルバイトやパートを確保できないんだって。
名駅や栄などの繁華街で時給の高いアルバイトをする学生が多いそうだよ」
地域格差や弱肉強食化が進む社会問題に、腕を組みながら重い表情を見せるボスゴリ。
「私の友だちでラーメン店をオープンした彼が、タイミーを活用して急なアルバイトを雇っているって言うです。
出勤して15分程度の説明をして働いてもらうんですけど、接客が悪くて常連客からお叱りを受けるアルバイトもいるらしいですよ」
コンビニで買ってきたアイスカフェラテを堪能しながらドレッサーがつぶやく。

人出不足でサービスの質が落ちているのは、客側だけではなく提供する側も理解していることが多い。
営業時間を短縮したり、定休日を増やしたりするお店もあれば、食券機を導入したり、一部サービスをセルフにしたり…と苦肉の策を講じている。
「でもね、給料だけじゃない利点を打ち出して、働き手を獲得しているオーナーもいるんだ!」
ズーズーと音を気にすることなく、ストローで吸いつくそうとするドレッサーが興味を示す。
「あるパン屋さんは、スタッフが休憩中に好きなパンを無料で食べられたり、売れ残りをあげるようにしたり、
ある地域では周辺の飲食店が協力してグループを作り、加盟店で働くスタッフは他のお店でも特別価格で飲食ができる特典を生み出したり、
創意工夫をこらした取り組みも少なくないんだよ」
こんなふうに、紙面や画面には載らない情報でも、歩み寄って取材をしているといろんなネタが入ってくる。
それは、次の取材時でのアドバイスに繋がったり、新しい取り組みのヒントになったりするのだから経験の積み重ねは重要である。
カップを片手に、解けかけた水分を飲み干したドレッサーが氷をガリボリと頬張る。
「食事の特典かぁ。結局いつの時代も、若者はハングリーなんですよね。金より団子ってヤツですか。でも何か、急にパンが食べたくなってきました」
逆転の発想、起死回生がピンチを救う!と、ドレッサーにも苦難が訪れた時のヒントになればと話をしたが、後悔をするボスゴリであった。

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視覚重視の罠! 地元に愛されるために必要なこととは?

「明確なコンセプトを元にオープンした」というお店を取材したときのことだ。
新しいマンションがいくつも誕生している街で、周辺エリアには競合となるスタイルのお店が少ないとのこともあり、「ありがたいことに繁盛店になっている」と店長さん
。ニッチな客層をキャッチし、リピートにつなげるメニューやサービスを開発。選ばれるお店を確立しつつあるようだ。
そこがすごいのは、今だけではなく10年先、20年先のことも計画し、今から将来の顧客を掴んでおこうと取り組んでいることである。
その一方で、時代の流れにうまく乗っかって、騒がれているお店の行方も気になる。

「人気のユーチャーバーがお店を訪れて紹介したようで、SNSがバズッて平日でも行列ですよ!
で、今度はそれを見たメディアが飛びついて取材したそうなんです」
取材先の店長さんが、古くから行き着けのお店のことを話す。
「SNSや媒体の効果がすごくて、繁忙期が継続するとお店はどうなると思います?
突然の質問にドレッサーは頭を抱える。
「儲かったお金で、新たな店舗を出店するとか、新しい設備を導入してメニュー開発に取り組むとか…
いずれにしても、上昇気流に乗って笑いが止まらないって状況ですよね?」
ニコニコと笑顔で聞いていた店長さんが真顔になって答える。
「今の時代、優秀な働き手を確保するのって大変なんですよ。人が回らない状況で料理を作るわけでしょ。
究極の選択として、手抜きが始まるんです。はじめは、これくらいなら大丈夫だろうってやってしまうんですけど、
地元のお客さんはしっかり“味”や“もてなし”を覚えているんです。
そうすると、そのお客さんから口伝えで噂が広まり地元客が離れていくように…地元の名店だったのに、SNSのブームが去った後、そのお店はどうなるんですかね」
「中国人観光客が訪れるお店から日本人がいなくなった!なんてニュースを数年前によく見かけましたが、そんな状態が地方でも起こっているんですね」
スマホに目をやりながら、「写真映えするから!」と料理写真をやみくもにアップしていた自分を恥ずかしむドレッサー。
「美味しいお店」ではなく、「ビジュアル」重視で拡散していたことを振り返る。
良く見せようと、盛りに盛って誇張された写真や動画と、実物とのギャップに、人はどんな印象を抱くのだろう。集客にはつながるのだろうが、リピーターになるのだろうか。
「一時、高級食パンのブームがあったでしょ。振り返れば、瞬間の出来事ですよ。近くにあった店舗も閉店しました。
うちみたいな個人店は、地域のお客さまに末永く評価される取り組みをしていかないと!と、痛感しています」
視覚的な展開を仕事にしているドレッサーだが、そもそも、「広告や販促を打つ目的は何なのか」を理解した上で仕事にあたらねばと勉強になる一日であった。