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怒りを乗り越えた冷静な思考テクニック

「ボスゴリ、聞いてくださいよ!週末に女友達でドライブに行ったんですけど、あおり運転されちゃって。
ハラハラ、ドキドキでしたよ。軽自動車だし、私みたいな若くて可愛い子が運転してると、なめられるんですよね」
「それを自分で言うのか〜い!さすがは、ここ数年、ドレッサーだな。でも、大事に至らなくてよかったよ」
以前、県の案件で、あおり運転撲滅キャンペーンのツールをいくつもつくった経験がある。ドラレコに録画された悪質な運転動画が、ニュースでも取り上げられることは多い。
「車内は自分だけの空間ということもあって、気分が大きくなる心理が働くみたいなんだ。
だから、ハンドルを握ると人が変わってしまう運転手もいるんだよ。ま、ボクは、マウスを握ると仕事スイッチが入っちゃうけどね」
「だったら私は、合コンの誘いがきたら、人が変わりますけどね。じゃなくて、あおり運転ですよ、あおり!
あおり運転撲滅キャンペーンのツールを、いろいろデザインしましたよね。こんな怖い運転手って、ほんとにいるのかなぁ?って思っていましたけど、いるんですねぇ」

世間を賑わす残忍なニュースを見ていてもそうだ。犯罪者の近くに住む人は、“おとなしかったのに、まさか!です”といったコメントが後を絶たない。
“自制心”というコップに、注がれていた水が突然溢れ出すことがある。活火山のように普段から予兆のあるボスゴリだが、逆鱗に触れ頻繁に発するのも、限度は違えどある意味同じなのかもしれない。
「あんまりしつこいもんだから、途中からイライラしてきちゃって。合コンに遅れそうで、マジ逆ギレ寸前でしたよ」
イライラが溢れずにすんだことに、胸をなで下ろすボスゴリ。
「確かに合コンも大事だけど、命あってのことだぞ!“生きてるだけで、丸儲け”っていうだろ。気を付けるんだぞ。
以前、オリジナル雑貨販売で、ノベルティをプレゼントしていたのは覚えているか?」
「当たり前じゃないですか!私がモデルになったんですから。レッサーパンダをメインビジュアルに“Oriruuna no Boore”って印刷されたステッカーですよね」
透明のスマホケースの内側に収まった、そのステッカーをドレッサーに見せるボスゴリ。
「忘れっぽいキミが、よく覚えていたねぇ。じゃあ、この“Oriruuna no Boore(オリルーナ ノ ボーレ)”の意味も覚えているかい?」
ボスゴリからスマホを受け取り、首をかしげて頭をひねるドレッサー。

「あっ、思い出しました。主役の私が“ボーレ”って名前で、“オリルーナ”って架空の地域で繰り広げる“絵本をつくりたい”って言ってましたよね。そのタイトルですよね」
「あ〜、全然違うんだなぁ。まぁ、この意味を説明したことがないから、知らなくて当然なんだけどさ」
また、はめられた。“すぐに答えを求めずに、まずは自分でも考えてみろ”って教えられたから、実践しているのにこれだ。ドレッサーは鋭い目でボスゴリを睨みつける。
「おいおい、逆ギレか?それが命取りになるんだぞ。
まぁいい、“オリルーナ ノ ボーレ”っていうのは、自分が怒りそうになったとき、その原因となる相手と同じレベルに“降りるな”ってことだ。
そんなことでひるまないために、もっと自分は上に“登れ”って想いを込めてあるんだよ。自分の心を整える、お守りみたいなもんだね」
「だから、すぐに見ることができるスマホに忍ばせてあるんですね。でもボスゴリ、よく怒りが爆発しますよね?」
「そのときは、スマホが手元になかった!ということで。じゃあ今回は、ノベルティについて話しておこうか」

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ノベルティの新機軸 心に残るプロモーション戦略

「“ノベリティ”といったら、うちにも企業名入りの使われていないボールペンが、何十本とありますよね」
「ドレッサー、“リ”ではなくて“ル”、“ノベルティ”ね。企業やお店、商品やサービスを宣伝するために、少しでも記憶に残してもらおうと、名前を入れた記念品を無料配布することが多いんだ。
ボールペンなんかは、いい例なんだけど、もらった人が使っているかというと、?だよね」
イベントやキャンペーン用に、いつくもノベルティデザインをしてきたが、どれもシンプルに社名やロゴだけを印字したものだ。
展示会などでは、アンケートに答えないともらえないアイテムもあるが、“欲しい”と思わせるには、企業名の印字ですら不要に思われることが多いのだ。
「“メッセナゴヤ”でモバイルバッテリーをもらったことがありますけど、あれも英語表記のロゴだけが印刷されたシンプルなものでした」
「広告主は自社の名前を思い出させるようにアピールしたいけど、相手はその逆なんだよ。
下の方に社名が入ったカレンダーなんて、そこを切って使う人もいるくらいだからね。そもそも、ノベルティは“目新しさ、新規性”って意味なんだ。
だから、手を変え品を変え、トレンドに合わせて次々と新しいアイテムが登場してるってわけだよ。モバイルバッテリーなら、ボクだって欲しいよ」
「だったら、もっと豪華な商品にすれば、しっかり記憶されるんじゃないですか?」
マネジメントまで身に着けていないドレッサーが目を輝かせる。

「高額な商品を無料配布してみろ、費用対効果はどうなる?
それにね、ノベルティを配布すると、一定数はターゲットとはまったく無関係の人たちが列を成したりすることも避けられないんだ。
だから、ディーラーやハウスメーカーなんかは、“商談された方に限り”って手を打ったりもするんだけどね」
大きくう頷きつつ、チラシを見た無免許の母親が、カーディーラーの新規オープンイベントで、シュークリームを欲しさに、行列に並んでいたことを思い出す。
「さらに、懸賞になると、景品表示法っていう細かい取り決めがあるんだよ。
その中でも、商品やサービスを利用したり、来店した人にもれなく提供する景品を、“総付景品(そうづけけいひん)”ていうんだ。
これだと、取り引き価格が1,000円未満ならノベルティは、200円まで。1,000円以上の取り引きであれば、取り引き価格の5分の1が上限と定められているんだよ」
「そんなルールがあるんですね。私が広告主の社長なら、“ドーンと派手に大盤振る舞いするのに”って思ってました。マネジメントのことは横に置いておいて。
だから、ボールペンやトートバッグが多いってわけですか。私はそんなアイテムを使うことはないですけどね」
「一人当たりの広告費に比べたら、大きな金額になるのに、イベントを盛り上げる要素として、雰囲気だけでノベルティをつくってしまう企業もあるんだよ。
どういう相手に届けたくて、手にした相手が気に入って使ってもらえるモノを考えないといけないんだけどさ。広告は、経費じゃなく、投資なんだから」

私たちの仕事は、社名やスローガンを印字するためのデザインをするだけではない。
ノベルティひとつをとっても、“そもそもの目的を考えた上でアイデアを練らないと効果が期待されない”と、実感するドレッサー。
自らノートを開けメモをする。“せっかく、お金を使うのなら、効果が期待できるモノに費やす。広告費は経費ではなく投資に変わる”。
勢いよくノートを綴じたドレッサーが、自信に満ち溢れた顔で席を立つ。「じゃ今日はこのへんで!私もこれから、夜の街で自己投資に励んできま~す」