Little boy with a flashlight

データのやりとりには、くれぐれもご注意を。

 広告や販売促進、デザインを制作する上で、イラストやキャラクター、写真、映像、グラフィックデザイン(美術の著作物)などを創作した人(著作者)には、著作権という権利が発生します。著作権には、大きく分けて「財産権」と「人格権」の2つの権利が存在します。「著作財産権」は、著作者自身があらゆるメディアにおいて、自分の著作物を複製したり、展示や送信などをすることができる権利で、自分の著作物を他人に勝手に複製などされない権利、または自分の著作物を複製などすることを他人に許諾することができる権利でもあります。一方、「著作者人格権(同一性保持権)」は、著作者が自分の著作物を他人が無断で改変することを禁止したり、著作者の氏名を自由に表示したりすることができる権利となります。著名な方の顔写真などに、小さく写真家の名前が記載されていることがありますよね。

 厳密に言うと、ライターが書いた原稿に誤字・脱字・衍字などがあった場合でも、意味や内容に重大な変更をきたすのなら、著作物の改変となり著作者人格権(同一性保持権)の侵害となりかねません。イラストレーターが描いたイラストも、パーツの変更や移動、色の変更などについても、作者に了解を得なくてはいけません。写真のトリミングについても、事前に作者同意の上で行うことが望まれています。弊社では毎年デザインを担当するカレンダー案件があり、一般公募した写真を選出して掲載するのですが、審査員が大きくトリミングの指示を出すことにいつも違和感を覚えます。応募要項で注意書きされているのでしょうか、撮影した写真家にしてみれば不本意なのではと心配になります。

 また、依頼した制作データが手元にあるから、と安易に手を加えたり、他の媒体で使用してしまうと後々大きな問題に発展してしまう恐れがありますので、くれぐれもご注意ください。

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買い取ったつもりでいた著作権のはずが…

 イラストを使った広告展開をすると、著作権もいっしょに買い取りたい、という要望をいただくことがございます。他の媒体にも使う計画があり、その度ごとに二次利用料を支払ったり、面倒な手続きを省きたいという考えもあってか、広告主さまが発注した著作物を買い取っていかれるのです。しかし、譲渡・移転ができるのは、複製権などの「著作財産権」のみ。「著作者人格権(同一性保持権)」まで獲得したわけではありませんので、著作者に黙って改変すると侵害になってしまいますので注意が必要です。広告主さまがデザイン料を支払ったり、イラストや写真を買い取ったからといって、必ずしもデザイナーなど(著作者)の著作権が譲渡されたことにはならないのです。このようなことを理解した上で、「著作財産権」を買い取りたいという要望がある場合は、「著作権譲渡契約」を作成し、事前に双方が納得できるよう紛争の回避を行いましょう。

 また、著作権の買い取りはしないまでも、他の媒体で二次利用をしたいとのニーズもあることでしょう。そのときには、広告主さま、制作会社双方(広告会社さまを含めると三者)の同意が必要となります。当初の目的のためにつくった制作物ですから、異なる媒体、目的にも採用するとなると二次利用となるのです。二次利用の目的や使用媒体、使用期間、部数、費用などの利用条件を定めて各社の了承を得ることをおすすめします。

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依頼をされていないのに、知らない所に自分のキャラクターが。

 まだ20代も前半の若い頃、勤務していた広告会社でデザインした動物病院開業告知の広告。メインビジュアルにと犬をモチーフにデザインしたキャラクターでしたが、相談されることにもなく使用され、30年近く経った今も同病院の看板を陣取っています。人目に付く場所に大きく扱われているくらいですから、処方箋の袋や診察券、院内ツールにも使われているのではないでしょうか。当時は自分自身も著作権や知的財産に関する知識もなく、担当営業も気にすることもなく許可をしたのかもしれませんが、帰省する際、同院の前を通りキャラクターを目にすると、まだ使われている!と嬉しくもあり複雑な心境に。クリエイターとしは、自分の作品が多くのシーンで起用されることはありがたいことなのですが、それには、相応の対価が求められるのです。

 以前、得意先である広告会社さまの方に、その会社において著作権で問題・訴訟となった事例を見せていただいたことがあります。その中には、制作会社を運営する顔見知りのデザイナーが異議申立をした案件もありました。内容をお伺いすると、制作依頼したチラシにイラストがあり、それを気に入ったため広告主さまが無断でホームページにも転用したとのこと。最終決着となったのは、デザイナーに納得してもらう高額な対価だっとそうで、担当者がはじめから手続きを得て二次使用料を支払っていればこんなことにならなかったのにと言う言葉が忘れられません。これくらいなら問題ないでしょう、と軽率に進めると、後から知らなかったでは済まされない違法行為となりかねません。ぜひ覚えておいてください。