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価値を見ることなく、数字だけで購入の決定に至っていませんか?

 シャインマスカットをモチーフにしたビジュアルをデザインしよう!とスーパーへ行ったときのことです。9月も終わり頃で、果物が並ぶコーナーには、ぶどうやナシなど旬のフルーツが所狭しと並べられていました。目当てのシャインマスカットの前に立つと、地元愛知県の東浦産、長野産、山梨産のものがずらり。価格も580円、780円、980円、1,280円、1,580円、さらに贈答用の箱入りのものまで揃っています。「つい数日前、帰省の手土産に980円のものを購入した」と一緒にいた妻。食卓にも並んだため、その日の朝も口にしましたが、特別うまい!といった類いのものでもなく、ただシャインマスカットを今年も食べたという記憶が残るくらいのレベル。しかし今回の目的は、個人作品に使用する写真撮影であるため何より「見た目」重視となります。そうなると、はじけそうなくらいに膨らんだ大きな実がぎっしり・どっしりとした房が対象に。当然、価格帯も980円のものより1,280円、でもやっぱり1,580円の上物になってしまいます。コストとしては1.5倍となりますが、後になって買い直すことを考えると、さらに手間もコストもかかってしまいます。2度美味しい機会にはありつけますが… ここはケチらず思い切って!

 自宅に帰り、早速ホワイトボードの上に存在感のあるシャインマスカットを置き、パシャパシャと撮影タイム。向きを変え、角度を変え、一通り取り終わると、次はモグモグタイム。「とりあえず今日はこれだけ!」と与えられた3粒を大事に口に放り込むと、何ということでしょう!ジューシーで濃厚なマスカットの風味、加糖されている?と感じる程の高糖度が口の中に広がるではありませんか。朝食べたシャインマスカットと同じ品種とは思えないありさま。ちょっとした衝撃です。

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売場で背中を押す、ポイント・オブ・パーチェス。

 こでふと疑問が生じました。多くの人は数字が羅列されたプライスだけを見て、そのものの本質に目を向けることなく高いとか安いとか判断することに慣れきってしまっているのではないか!と。工業製品で全く同じ商品なら価格だけの比較はわかりますが、それでもアフターサービスなどで付加価値を提供することで差が生じ、成果をあげている町の電気屋さんも数多くあります。物事の本質を鋭く見抜く洞察力を慧眼(けいがん)と呼んでいますが、その目を基準にして購入を決める方も少なくありません。シャインマスカットの例で言うと、980円のものと1,580円のものでは1.5倍の開きがありますが、甘さや美味しさ、感動…を考えると1.5倍以上の満足感が十分にあるのです。となると、1,580円という金額は決して高いものではなく、私のような庶民にとってはちょっと贅沢な商品と位置づけが変わるだけなのです。

 では、売る側は金額の差異にそれぞれ理由があることを、しっかりとメッセージできているのでしょうか? 今回のスーパーに関して思い返してみますと、店頭で入手できたメッセージは、いずれも太文字で書かれたPOPで「生産地と価格」のみが表示されたもの。世相を反映してか試食品もありません。そもそもPOPとは、Point of Purchaseと言って売場に設置された広告や展示物のことで、情報を届けるものもありますが、購買を促すきっかけとなる効力を持たせたものなのです。

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人の背中をそっと押す、ちょっとしたクリエイティブ。

 広告の観点から、もう少し考えてみましょう。もし1,580円の商品が並ぶエリアに「極あま!芳醇!今日は特別 ご褒美シャインマスカット」と書かれたPOPがあったらどうでしょう。他と違って商品自体の品質の良さ・高級感が伺えます。さらに、心理的にアプローチするメッセージから「暑い日続きで、がんばってきたし、たまには贅沢をしても良いか!」とボディブローを打ちかけます。「たまたま来客もあるし!」だとか、「これならInstagramで自慢できる!」「高級フルーツパフェを食べに行こうと思っていたけど、これもアリか!」と、集まる注目の数がグンと増えるのです。当然、情報がインプットされた母数が増えれば、購入に踏み切る人の数も大きく変わってきます。売れ行きがよくなれば、追いかけで「残りわずか!」と新たなPOPを打ち出して、「そんなに人気なら私も!」「この機会を逃すと!」と買い急ぎ効果に拍車もかかってきます。980円の商品にしようと思っていたお客様も、1,580円はちょっと無理だけど、1,280円にするか!とグレードアップすることも期待されます。もちろん、手頃な価格の商品も買っていただきたいのですが、鮮度が落ちて数日後に割り引きするのが高額な商品だと痛手も大きくなってしまいます。

  売れないから「安く」することは、誰でもいつでもできます。しかし、しっかりと価値を伝えないまま、伝わらないままで新たな手を打つこともせず、あきらめモードに入っている方もみえるのではないでしょうか。競合となる他の商品とどういうところが異なり価値があるのか、品質なのか、希少性なのか、季節はずれなのか… 商品開発に至る時点でそのコンセプトはあったかと思われますが、それが忘れ去られてはいませんか? 売り手目線で消費者目線をないがしろにされてはいませんか? もう一度、売り出す商品やサービスを見つめ直し、その魅力をしっかりとメッセージしてみてはいかがでしょう。