伝えたいことが伝わらない!業界用語や英語は逆効果?
レギュラー案件をはじめ、単発で発生する仕事を進めているなか、久しぶりのプロポーザル案件の依頼が。
数年前までは、「コンペ」や「競合プレゼン」などと呼ばれていたが、
グローバル化と叫ばれるようになってからか、新しい用語が次々と使われるように。
地域ならではの個性や魅力を大切に!といった風潮が強くなる中、
英語が多様されるようになってきているのは、デザインや広告業界だけの話ではないのだろう。
「ボスゴリ!このプレゼンの仕様書、わざと難しく書かれているんですかね?
必用だと思って事細かく記載されているんでしょうけど、
目を通すだけで何だか気分が萎えてくるんです・・・」
ツラツラと文字だけで埋め尽くされた紙面とにらめっこをするドレッサーが眠たそうに呟く。
「小説やビジネス書を読んでいても、登場人物が自分は凄い!とアピールしているつもりなのか、
わざと難しい業界用語や英単語を使うんだけど相手に理解されず、
かえって印象を悪くするというシーンをよく目にするんだよね。
『自分』主体の表現ではなく『相手』のことを考えた発信にするだけで、コミュニケーションはスマートになるのに、
本人の熱量が大きかったりすると、そのポイントをすっかり忘れてしまうんだよ。
それに、あれも伝えたい、これも伝えたい、ここは注意してね・・・て具合に多くを語り過ぎた結果、
何も伝わっていないってことが広告や販促のツールでもよくあるんだよ。
その仕様書だってそんなところだろう」
「シンプルで単純明快!ポイントは絞らないと!ってことですよね」
フリクションの蛍光ペンで重要な箇所を塗りつぶし、要点を浮かび上がらせながらドレッサーが答える。
「先日テレビが故障したんです。
話の分かる人に説明を聞きたいのに、ホームページを調べると電話番号の記載がなくて、
仕方なくチャットでやり取りしても話が噛み合わず・・・
長い時間を費やした挙げ句、解決に至らなかったんです。
結局、現物を見に行くから出張費が必用とかで、さらに、部品交換なら十数万円もかかるって無機質な文字が送られてきて・・・
そんなにするんなら、新品に買い換えるっつーの!!」当時のイライラをあらわにするドレッサー。
便利な時代になっていく一方、業務の効率化がお客さまへの対応よりも優先され、
人が介在しなくなるケースが増えるとともに、サービスの低下につながっている例も多い。
ユーザビリティが高く、信頼性アップにもつながるサービスが求められている。
「で、ボスゴリ!ユーザビリティって私にはさっぱりわからないんですけど・・・」
顧客満足度を上げるメッセージ
「つい先日、おじちゃんとおばあちゃんにご馳走をしようと思ってレストランに行ったんです。
大きなメニューで、きれいな写真も載っていて分かりやすいんですけど、注文がタブレットなんですよ。
ふたりとも初めてだったみたいで、やり方がわからないんですよね。
ここを押して、次の画面に行って・・・て説明をしたんですけど、ふたりで操作するのはハードルが高いみたいで、
自分たちだけでは、このお店は利用できないねって」
楽しいはずの外食の様子を寂しそうに話すドレッサー。
「それにメニュー名も今風のネーミングで・・・
わかりやすい説明がほんの少しでもされていれば、
ストレスもなくイメージも膨らむのに、提供する側は客側の想いがわからないんですかねぇ。
ふたりにどんな料理か説明してあげて、オーダーも私がやってあげることになって
そのお礼だ!って、ちゃっかりご馳走されてしまいました」
おそらく、初めからそんなことも計算していたのだろうと、ドレッサーの性格を知るボスゴリは頭を掻く。
横文字でおしゃれでかっこいい、というイメージが先行して、本質を捉えていない表現が氾濫している。
そんな難しい言葉も、それを補足するコピーがあるだけで読み進められるのだが、
「頭では理解していても、相手の立場になって上手く考えられないってことがよくあるんだよ。
相手にどう動いて欲しいのか、どう自分のことを思って欲しいのか、
それらを紐解いていくとメッセージは伝わるんだけどね。
あるお蕎麦屋さんの話なんだけど、2代目に変わって、商品名と金額だけしか載せていなかったメニューを一新したんだ。
『蕎麦の風味を引き立てる、新鮮でジューシーなオリジナルの鴨肉を堪能!当店一番人気の鴨南蛮そば』って
メニューにコピーを追加しただけで売上がグーンと伸びたんだって。
品定めに迷う人も少なくなるし、利益率の高い商品が数多くオーダーされるから、もくろみ通りのアピール方法だよね」
お店に入るなり券売機と対面し、どれにしようか迷っているうちに後ろに次のお客さまが並ばれて
あせった挙げ句、食べたい料理にありつけなかったという経験をされた人もいるだろう。
そういった慌ただしい時代だからこそ、メッセージを含めお客さまに寄り添ったサービスが望まれている。